Cement Stabilised Soil

研究の背景


深層混合処理による地盤改良工法は,セメントなどの固結材の硬化作用によって軟弱な地盤に所定の強度を発揮させるための工法として開発された.本工法は,軟弱地盤をそのままの状態で改良できるため,(1)周辺に既設の構造物があり直接掘削が困難な場合,(2)床掘置換のために掘削した軟弱土の土捨が困難な場合,あるいは(3)地盤の掘削による環境への影響が懸念される場合などに有効な工法として考えられている.現在では,上記の特長を活かし,構造物の安定性確保を目的とした施工実績がある.

一般的に,改良地盤は長期耐久性が高いと考えられ,地盤改良工法を用いた構造物は長期間に渡って設計時の性能を維持できると期待されている.しかしながら,深層混合処理工法はその歴史が未だ浅いため,諸特性の長期的な経年変化はあまり明らかにされていないのが現状である.改良地盤の長期健全度に関する調査・研究事例も少なく,経時的な強度増加傾向を示した報告がある一方で,条件によっては強度低下(劣化)が生じる可能性を示唆した報告もあり,未だ研究途上にあると言える.

改良地盤の固結材はセメント系材料であり,以下に示す材料的性質を有する.すなわち,(1)主成分はCa水和物であること,(2) Ca水和物にはCa(OH)2が含まれておりその細孔溶液中は高カルシウム濃度,高アルカリ性であることおよび(3)周辺は高含水比を有する未改良軟弱地盤であることなどの性質を有する.同じセメント系材料であるモルタルやコンクリートにおいては,上記の環境に暴露された場合,硬化体を構成するCaが細孔溶液に溶解し,外部へ拡散する現象(Ca溶脱)が多数報告されている.したがって,改良地盤の場合もCa溶脱により劣化することが予想される.特に,今後の社会資本への投資額の減少を考えると,深層混合処理適用時の工費削減のため,単位セメント量の減少や部材寸法の縮小が予想される.このような場合,Ca溶脱に伴う劣化の改良地盤への影響はより大きくなる.しかしながら,改良地盤からのCa溶脱に伴う劣化に関する研究は稀少であり,そのメカニズムは不明確である.

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